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「蛍さん、こいつらは確かに初めてだがシャンパンに慣れさせることも必要だ。必要のない出費は俺は望んでない」
「でも、初めてで無理して何日も使えなくなるのはもっとダメでしょ?この子達も、姫達も楽しんでなんぼじゃないかしら?」
新人達は20歳なりたてでまだお酒への耐性がない。ましてやシャンパンはきつかったらしい、顔色が悪い。弱めのチューハイを勧めたらハスキーさんが指導者の顔になった。
でも、そんなので屈する俺じゃない。微笑むと、2人がおずおずと指さした。おぉ、よくできました。チューハイを注文し、ハスキーさんに笑ってみせた。
「……あなたは、優しすぎます。まるでハルトを見ているみたいだ。あいつもお人好しなんですよ」
「お人好しで、真面目で、そしてすごい方向音痴なんでしょう?この店内でもよくやるんですって?可愛らしい姿、見てみたいなぁ」
まぁ無理だけど。俺が“蛍”としている間だけは、本気で好きなんだってぶつけたい。“ハルト”ができないことが“蛍”ならできる。
ハスキーさんの肩にもたれかかって、大きな手に触れて。指をツンツンしてみたら指を絡めて握ってくれた。俺のとは全然違う、男らしい手。
「細いなぁ。このまま力を籠めれば折れちまいそうだ」
「人は見かけによらないのよ。これでも林檎を握り潰せるくらいの力はあるの。目の前でやってみせましょうか?」
ちょっとだけ力を入れてみたら、スケスケと新人達が「マジで!?」と顔を青くさせて振り向いた。残念だけど、マジ。
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