第1章

4/6
前へ
/29ページ
次へ
「楽しようとするな。痩せたかったら規則正しい生活、程よい運動とバランスの取れた食事だ。馬淵なら風呂上りに軽くストレッチするだけですぐ落ちる。ただし、2日に1日程度でいい。毎日だと――」  ぽっちゃりした女の子を相手にストレッチの仕方をレクチャーしてる、俺の初恋の相手。ホストっていうより、ジムのコーチ?  ここはホストクラブ“ペットショップ”。彼も俺もホストで、そして俺は源氏名ハルト。顔にはそこそこ自信があったけど、雇われてからかなり万人に好かれる顔なんだと自覚。客層は主に年上が多い。  そう、俺はホストクラブにスカウトで雇われて初日にシルバーハスキーさんに出会い恋に落ちた。一目惚れ。  同じ職場。仕事中に隙をつけては彼を見つめたり。待機中にたまに話をしたり。休みの日には一緒に出掛けたりしてくれる。  彼は俺が雇われてからの担当指導者だから、面倒見がいい。一緒に出掛けてくれるのも、きっと先輩として付き合ってくれているんだと思う。  俺達は同性だから、俺に好意があるって微塵も考えてないんだ。だから俺はいつも“可愛い後輩”として接している。  でもやっぱり、彼が仕事している姿を見るのは苦しいな。 「ねぇハルト君。あたしが気づいてないとでも思ってるの?……妬くわよ」 「んぎっ!もがっ!?」  ハスキーさんのストレッチのレクチャーに見とれていたら頬を引っ張られた。しかも爪を立てて。しかも振り向いたらバナナを口に押し込まれた。しかも皮ごと。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加