第1章

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「ごめんなさいね。でも、あんな可愛らしいぽっちゃりさんに目を奪われているあなたが悪いのよ?ハルト君が今見ていいのは、あ、た、し、だけ。おわかり?」 「んう、っ……す、すみません。彼女を見ていたのではなく、その……ハスキー先輩の対応が素晴らしいなと。俺ももっと自分に自信をもって強くなりたいです」  バナナの半分近く突っ込まれたせいで涙が出た。いや、そんなことより。太客の美咲さんを怒らせてしまった。  嘘はついてない。性格的にも嘘はつけない。俺、素直でしょ?オーナー曰く、こういうところが俺が売れる理由なんだって。 「ぷっ……あはははっ!正直な言い訳とか、素直すぎるわよバカ。まぁ、天然ちゃんだしそんな素直で律儀な所が気に入っているんだけどね」  あれ、怒ってない?顔は怒ってたのに、キョトンとしたのちに急に笑い出して。今度はイチゴを口に入れてくれた。甘酸っぱくて美味しいです。  お姉様の笑い声が大きくて、周りの客やホスト達の視線が集まる。もちろん、ハスキーさんもこっちを見ている。俺を、見ていた。  目が合った。途端にカッと顔が熱くなって、たまらず真っ赤なワインを煽った。  笑っているお姉様ではなく、俺を、まっすぐ見ていた。怒っているわけでも驚いているわけでもなく、笑ってもいなくただただ見つめていた。  やば。皮ごとのバナナを口に突っ込まれて涙目になってる情けない顔を見られた。忘れてくださいっ!ひー恥ずかしい!
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