第2章

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 ホストクラブ“ペットショップ”のナンバーワンは、俺。入社して半年でなぜか1位になった。  オーナーもホスト仲間も「そりゃあな」って納得しているんだけど、俺にはそんなにモテる自覚がない。  なんで?客の1人1人に真摯に向き合って、真面目に話を聞いてあげて一緒に楽しんでるだけだよ?って言ったら、何かとんでもなくえげつない汚いゴミでも見るような目で見られた。  それでも頭の上にハテナを生やすものだから、ハスキーさんが俺の肩をポンッと叩いて「才能だな」って笑ってくれたんだ。すっごく嬉しかった。  その、俺が恋心を抱いているシルバーハスキーことハスキーさんが、ナンバー2。俺が入るまではずっと3~5位だったらしい。  毎月ぶっちぎりの俺に、毎月ギリッギリで俺の真下の売り上げになっているハスキーさんには太客中の太客がいる。本物のお姫様。その人が毎月ハスキーさんを一気に2位まで浮上させている。  その人が来店するのはいつも月末。締め日前に来店してはとんでもない金額をハスキーさんに注ぎ込んでナンバーワンを狙ってくる。けれど、なぜかいつもギリギリ届かない。  お客様のプライベートを詮索してはいけないんだけど、彼女がどうやってそんな大金を作ってきているのかは不明。ホスト仲間達は風俗だの闇バイトだの、株とか宝くじとか言ってたか。  バックヤードでワイワイ騒いでいた新人達を「蛍さんはまっとうな仕事人だ。想像するのはいいが本人の前で言うんじゃねぇぞ?」とハスキーさんが叱った、あれは格好よかったなぁ。しびれた! 「ハスキー、蛍様がいらっしゃったぞ」  そんな、何かと不思議なお姫様が今夜もやってきた。
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