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危険な唇
その唇を見るたびに今日も僕は自分を見失いそうになる。
抑えきれないこの想いに自分が押し潰されてしまいそうになる。
だって愛おしい君のその唇は僕の思考回路を麻痺させてしまう位、時に愛らしくて魅力的で、それでいてさりげなく色っぽくて、はにかむたびに上がる口角がゾクゾクするほど官能的だから。
その口でまた甘く囁かれたら、きっと僕はどうにかなってしまうだろう。
いつも雲の上の君を遥か下の方から仰ぎ見ては遠くからそんな君にうっとりしていた。
だからなんだか今でも信じられない。
僕らがこんな風になるなんて、少しも想像してなかったから。
*
そっとおそるおそる目を開ける。
なぜなら目を開けたら目の前のものが全部なくなって、それが全て、ただの夢だったんじゃないかって思えてしまうから。
怯えながらその目を開けると、僕のすぐ目の前の君が真っ直ぐ僕を見つめていた。
その素敵な唇がこうして僕の目の前にちゃんとあって。僕の唇を掬いとるように優しく食んでくる…。
その瞳は確かに今、僕だけを見ている…。
伏せた睫の奥からじっと僕を見てくる。目の前の僕だけを真っ直ぐ見ている…。
危険なその君の唇が僕に触れたとたんに僕をこうして狂わせる。
好きになればなるほど、君を失うことへの不安がその分大きくなっていく。
だけどもう僕はそれをとめることが出来ない…。
静かに僕に近づき、その危険な唇が戸惑う僕の唇に触れ、優しく啄むと僕は途端に熱に覆われ蕩け出す。
そうして僕は君の腕のなかに身を委ねる。
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