その唇…

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彼がテーブルに両手をつき、前屈みになって体をテーブル越しに乗り上げるようにしたから、僕は驚いて思わず目をギュっととじた。殴られるかって反射的にそんなことしたけど、よく考えたら彼はそんなことするはずないのに…。 すると僕の唇にフワッとなにかが触れる感触がした。目を開けると目の前に彼の顔。あの綺麗な唇の片方の端がくいっとあがってエロティックに微笑んでくる。 うそ、もしかして、今のって、キス? 頭のなかはもう真っ白だった。 「ゴメン、返事待てなかった…」 危険なその唇がエロティックに少し開き、そんな言葉を僕にこぼした。 あー、これが夢なら覚めないで欲しい。 ニコッと笑う彼の唇のせいで僕はもうこの唇に夢中だ。 その唇が触れた瞬間、僕の中にあった隆太への想いなんか、どこかに飛んでいってしまった。 目の前の冷めたラーメンなんかよりも僕はもう、この目の前にあるその唇をもう一度味わいたくて仕方なかった。 * 今でも思い出す。彼とのあの衝撃的な1日。僕の心をかきみだした彼のその危険な唇からこぼれたその言葉が、今でも時々僕の心を震わせる。 彼のそのエロティックなその唇は今日もこうして危険な微笑みで僕を誘う。 彼のその唇が静かに僕に近づいてくる。 この唇に触れられたら、その瞬間に僕は狂わされてしまうだろう。 その素敵な唇が近づいてくるのを待てずに僕は自分から唇を寄せ、その腕のなかでそっと目を閉じた…。 おしまい
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