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噂の彼と初めての会話
「おい、ほら、落とした。」
大学のキャンパス内、中庭に続く遊歩道で突然、後ろから声をかけられた。
振り返ると、あの噂の彼だ。名前はアキヒロくん。周りの女の子がそう呼んでたからきっとそうなんだろう。
いつもカッコよくて存在感がハンパなくて。みんなの人気者で噂が絶えない彼は僕にとっては雲の上の人。
そんな彼が拾ってくれた。僕が落としたプリント。
こんなにも至近距離で見つめ合ったのはこれが初めてだ。
近くで見れば見るほどやっぱりイケメン。
すると彼の手がフッと延びてきて僕の前髪をさわった。
ビクっとして肩を竦める俺と。横にいた隆太は、それに驚いたのか、思わず彼のその手を振り払おうとした。もう少しでその手を掴む寸前のところで彼が呟く。
「桜のはなびら…。」
「え?」
見ると彼の指先につままれてたピンクのはなびら。
指先にのせて、こっちにそれを見せたあと、それに息をふぅっと吹き掛けた。
ヒラヒラと舞い、地面に落ちた。
なんて絵になるんだろう。
イケメンは何をしてもやっぱりイケメンだ。
そんな彼の姿に思わず見惚れた。
見惚れたせいで、拾ってもらったはずのプリントをまた落とした。
「「あ!」」
二人同時に叫び、二人同時に拾ったせいで。屈む彼の顎に、顔を上げた僕の頭が下から直撃。
ゴツン!
凄い音がした。おでこを擦りながら顔をあげる。
「ゴメン。」
彼に謝ると彼は痛そうに顎を擦りながらこっちを見おろした。
「あ、血が出てる…。」
僕の頭と彼の顎がぶつかって、彼の口から血が出てた。僕の石頭のせいだ。
真っ赤な血がなんだか妙にエロティックだ。海外の映画のドラキュラが美女の首筋に歯をたてた後みたいな変な色気を漂わせてる。
こんな時に何を考えてるんだ、僕は。不謹慎にもほどがある。
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