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だけど。顔をしかめて目を閉じてる彼のその顔があまりにもエロかった。唇のはしを舌がなぞり、長くて細い右手の中指がエロティックにその赤くなった唇に触れた。内側の唇のピンクの粘膜がチラリと見えてなんだかんだゾクッとなった。
「っつー」
って。その声にならないような吐息混じりの声さえも、なんか、エロい。
「ごめんね、大丈夫?」
「大したことねぇよ」
「でも、結構出てる。血が」
思わず僕はバックからティッシュを取り出して彼の口にそれを当ててた。
彼に触れた瞬間、僕の指先が震えた。
すると僕の手ごと掴んだ彼の細くて長い指先が僕のその手を掴んで離さなかった。
「え…、あ…。」
急にドキドキしながらソロソロと僕は手を抜き去り手を引っ込めると、彼は僕が出したティッシュでその口を押さえたまま、じっと僕を見下ろしてきた。
「ん?なに?」
「なんか、顔が赤いな、大丈夫か?お前も痛かったよな、頭…。」
自分は血が出てるって言うのに僕の心配なんかしてる。
「平気だよ。ごめんね。
じゃ、じゃあっっ。」
「おい、ちょっと…」
って声も聞かずに走ってその場を去っていた。
急になんだかすごく恥ずかしくなったから。
だからその後の言葉なんて聞こえなかった。
「なんだよ…、何で逃げるんだよ…。まだ話したかったのに…」
彼のその素敵な唇がそんなことを呟いてたことなんか、僕は知るよしもない。
あー、もう少し本当はあの彼の顔を目の前で見ていたかった。もう少し一緒にいたかった。けれど。僕の顔が熱くてどうにも耐えられなかった。
彼が何のつもりで何を言おうとしたかなんてわからない。
僕は僕で、自分でもよくわからないこの感情をどう処理していいのかわからなかった。
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