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心配してくれた
なんとあの彼がまた僕に近づいてきた。
驚いたことに、僕の顔を見るなり、頭をいきなりポンポンしてきた。
「わぉっっ。」って。思わず変な声が出た。
「そんなに驚くか?」
アキヒロ君が呆れたような優しい笑顔で僕を見下ろしてきた。
「え、 あ…。へへへ。」
照れながら上目遣いで彼を見つめ、持ち前の笑顔で誤魔化すと、彼が咳払いをして変な笑い方をした。
あれ?もしかしてちょっと照れてる?気のせいか。彼が僕のその変な笑いにつられて少しだけ笑顔を見せた。
「大丈夫か?あれから、頭…痛くない?」
え…、うそ、僕の心配してくれてる?
奇跡なんてこの世にないと思ってたのに。今まさに僕の目の前で起きてることが奇跡でなかったらこれをなんと呼ぶ?
「僕は平気だよ、ほら、こんなにも石頭だからね。」
げんこつで自分の頭をコツコツ叩きながら笑うと、彼がまたあのおかしな笑い方をした。その顔を大きな手のひらで隠すように覆ってる。
「んだよ…、マジか…、そんな顔、ヤバすぎだって」
って呟きながら。なに?どうしたの?
呆れたような、少し照れたような、苦笑いのような顔。そしてあのエロティックな口角の片方が上がった唇で眉毛を下げ僕にまた笑いかけてくる。
「君こそ、口のなかは大丈夫?ベロ痛くない?ご飯とかちゃんと食べれた?」
かかとを上げて背伸びをして上目遣いでじっと彼の、その綺麗な形の唇を見つめると彼はなぜかまた咳をして突然僕から目を反らした。
「お、俺の方は平気だよ。じゃあな。」
それがなんだか急いで僕から離れていくように見えた。
あれ…、なんか変なこと、言ったかな。気にさわることでもしちゃったんだろうか…。
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