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「悪いけど、他当たって」
その場を立ち去ろうとした僕の腕を、藤代さんは掴んで引き止める。
彼女は泣きそうな顔をしていた。
その表情を見ると助けたくなるような気もするが、面倒はごめんだ。
「お願い!佐枝君はあたしが知っている人で1番強いんだよ。他の人にこんなこと頼めないし」
「僕は白の十字架のリーダーだった。だから、黒鴉とは関わりたくない。それも相手がスグルなら尚更面倒だ」
「あたしがどうなってもいいの」
僕を見つめる瞳に涙がこぼれる。
藤代さんがどうなろうと知ったことではないけど、放っておく訳にもいかない。
彼女が危険な目に合うのを知らぬフリなんて、あまりにも可哀想。
正直言って嫌だ。
けど、仕方ない。
女の子に泣くほど頼まれたら、断りづらい。
「分かったから、泣かないで。僕になんとか出来るか分からないけど。まあ、ボディガード、引き受けるよ」
「ありがとう、佐枝君。やっぱり君ならら引き受けてくれると思った。だって優しいから」
僕が優しい、か。そう言われて悪い気はしないが。
面倒臭いことになったな。
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