第一章./閑話

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 そうして、すこし、冷静を取り戻せば狭まっていた視野が次第にひろがり、落ち着きを飼い慣らし。  その落ち着きで、ふと感じる、こちらに突き刺さってくるような視線と、気配。  そちらにコチラも視線を移していけば、電話している男とはべつの、もう一方の  黒服の男性が凝視するように私のことを見つめていて。  現状、アーウェイさんと電話している彼よりは、歳のほどは上の、  『壮年の男性』と言う表現が、いちばんしっくりくる。  スキンヘッドの様相でありながらどこか下手(しもて)に感じとれる  所作と立ち居振る舞い。  (……このひとのほうが、  年嵩(としかさ)に見えるのに。いや…考えすぎ、か)  悪意があれば何となしに  直感でわかるものだけれど、この男性からは悪意と言うよりは、  (……怪訝?に近い気が、)  一旦、目を宙に泳がせて。  黙考し、そう独断した私はもう一度チラ、とその男を見遣るべく  双眼をグルり、動かした────…、  その────…矢先だ。  (…………っ、  …………………………え、)  ────、ふと、凝視してくる彼にだけ視線を固定しようとしたのに  それは失敗に終わる。
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