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キッチンのスタッフが急な体調不良で出勤できなくなったらしく、人数が足らなかったらしい。
しかもバースデーイベントど真ん中
1人欠員が出るだけで回らなくなる。
「千鶴料理できるだろ?レシピのマニュアルここにあるから、この通りに作ってくれないか?」
バサっと置かれたマニュアルの冊子
パラパラと目を通して、そんなに難しい料理はないし、材料が揃ってればできる
「わかった。手、洗ってくる」
髪をくるりと纏めて、シャツの袖をまくり、借りたエプロンを身につけて、手を洗う
マニュアルを一つずつ確認し、ある程度は頭に叩き込む
大雅君が「後は頼んだぞ」という声かけも気付かないくらい集中していた。
ドリンクよりオーダーは少ないけど、それでも結構オーダーが入る。
私以外にもフロア担当のスタッフが1人臨時でヘルプで入っていて、恐らく普段料理をしないのか手元が不安定で見ていて心配になる。
「川崎君、」
「わっ‼︎」
「大丈夫⁉︎ごめんなさい、私が急に声をかけたから」
「あ、いや…っ」
「とりあえずティッシュで押さえて、血が止まったら絆創膏貼ろう。今持ってくるね」
フルーツのカット中に後ろから声をいきなりかけてしまったから、驚いてペティナイフで指を少し切ってしまっていた。
この川崎君というのはアルテミスの中で最年少で、確か大学1年生で18か19歳だったと思う。
覚束ないところはあるけど頑張り屋さんで、いつもモニター越しから密かに応援しているのだ。
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