裏方のお姫様

Ⅳ

お客様のピークは、だいたい21時から0時くらいにかけて
ここでいかに集客できるかで売り上げが決まってくる。

まだ2日目だけど、初日を超えそうな勢いらしく、シャンパンの他にも高価なワインやブランデーなども出ているみたい。
サイドメニューもいつもより出てるし今のところ良い感じだ。
このまま明日の最終日を迎えたい
…が、そう上手く事が運ぶ訳がなかった

「ラストまであともう少しですね」

「そうだね、頑張ろうね」

「はい‼︎……あ、」

また私ではなく、違う方向を見る川崎君
さっきのデジャヴ？今度は何？とキッチンの入り口を見ようと振り返ろうとしたら、既に背後に誰かの気配

「俺にもちょーだいよ」

後ろから私の顎をクイッとあげて目線が合う

「リョウさん、ちょっと…」

「俺もたべたい」

「酔ってます？」

「んーん」

「（どっちよ…）」

「なんかさっぱりしたものたべたい」

「やっぱり酔ってるじゃないですか」

時刻は既に0時に近く、普段に比べたらお客様の入りの多いイベント期間中はプレイヤーが飲む量も必然と増えるわけで
お酒に慣れてると言えども仕方ないこと

「リョウさん、これどうぞ」

川崎君がお皿にのせて出したのは不恰好なりんご
リョウさんのために頑張って剥いたのが可愛らしい。

だけども、リョウさんは食べようとしない