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「りんご美味しいですよ?」
川崎君が勧めても一向に食べる気配がない。
人が剥いたものに抵抗があるのかな?潔癖とか?
「リョウさんが食べないなら、私食べるよ」
お客様への提供用に剥いたわけではないため、誰かが食べるしかない。
川崎君が頑張った証のりんごは不恰好でもなんだか可愛らしい。
あとで私が美味しく頂こうと、ホクホクした気持ちでいたら
「千鶴がたべさせてよ」
この酔っ払いが
私に構わず早く仕事場に戻って欲しい
というか何でキッチンに来たんだろう。
「はーやーくー、あーん」と懲りずにりんごをせがんでくるから、仕方ないかと思い開けてる口に放り込もうとお皿に乗ってるりんごに手を伸ばしたところでもう1人の声が聞こえてきた。
「リョウ、何してんだよ」
入口には長身のアッシュグレーの彼、ハヤテさん
「どこで油売ってんのかと思ったらここかよ。早く戻れ、お前の客待たせんな。」
面倒くさそうというか、若干怒り気味でリョウさんに詰め寄る。
「あ、ハヤテじゃん」と呑気な口調で返すリョウさんに呆れてしまう。
この2人は年齢が同じだからなのか、時々一緒にいるのを見かける。
側から見たら仲が良さそうには見えないけど、良きライバルなんだろう。
「妹もマネージャーなんだったら注意しろよ、その役職はお飾りか?あ?仕事しないんだったら辞めろよ」
厳しい口調だけど、正論だ。
従業員の指導もする立場なのに、これじゃあ示しがつかない。
もっとしっかりしなくちゃ。
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