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Ⅰ
♦︎
「だから嫌だってば」
「頼むッ、もう千鶴しか頼む人いないんだって。一生のお願い」
一生のお願いをこんな簡単にも捧げてしまうこの人は、私の実の兄。
頭を下げ、両手を擦り合わせて頼み込んでくるお兄ちゃんを冷たい目で見下ろす。
「どうして私なの?従業員に頼めばいいじゃない。」
「い、いやぁ、それがさぁ信用できなくてさ。マネージャーともなると金銭管理もお願いするんだけど、いかんせんホストって金銭感覚バグってるからさ」
聞いて呆れた…
もう何て返したらいいのか
実の兄だけど、まぁ……好きだし頼れる存在だけど、さすがに今回の件は首を縦に振ることはできない。
「ほんとに無理だから、他あたって」
「そこをなんとか頼むよ千鶴。お前しかいないんだよ」
お互いが譲らないためか、この状況がかれこれ30分位続いている。
絶対引き受ける訳無いんだから、早く諦めて欲しい。
そして早く家に帰りたい。
こんないかにもな繁華街に長居したくもないし、遅くなればなるほど駅までの治安は悪くなる一方だ。
仮にも私、女子だし?
不慣れな繁華街は怖くて歩きたくない。
引き受けなかったとしても兄である大雅君に絶対に送ってもらおう。
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