花の火

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 あたしの手と、ずっと編むように繋いでいる柳が覚悟を決めたように視線を伏せた。  それから、打ち上がる花火の音の隙間を縫うようにゆっくりと言葉を紡いでいく。 「俺は、菊と姉弟らしくなかった。家族だとは思っていたけど、特別仲が良かったとかじゃない。 でも、こっちに戻ってきた菊が、牡丹って女の子との花火の約束のこと、珍しく何回も言うから、仲良かったんだなって気になって……。 会ってもないのに一方的に知って、友達にでもなったような感覚だった」  傷付いた心の切れ目に、じわじわ入り込んで癒すような、あたしの知らない菊ちゃんの話。 「菊が自殺してから、自分の中で一区切りつけたあとは、牡丹って女の子のことが気がかりだった。 大学で会った時、自暴自棄になってるの見て、同情と共感から声かけた。偽善の感情もあった気がする。 けど、俺が想像してたよりも、牡丹は菊のことで傷付いて苦しんでて、正直かなり驚いた」  言葉数の少ない柳が、嘘偽りない本音を語るのは初めてだ。  淀みない口振りで、段々とあたしの手を強く握る柳は、まるで逃げられることを危惧してるような。らしくもない姿。  自信のなさそうな双眸が下を向き、睫毛で影ができる。 「言いたいことがある」 「うん」 「言わなきゃいけないと思ってた」 「……ん」  ゆらゆらと、視界が涙で霞んだ。 「この関係、終わりにしよう」  張り詰めた糸が、音を立てて切れる。一際大きな花火が、背後で散った。
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