花の火

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 解放されて息苦しさがなくなったのに、あたしたちの顛末に涙が止まらない。  身体の中で、何かが決壊した。とめどなく溢れ出る自分の涙を拭いたいけど、なぜか手は鎖のように繋がれたままで、代わりに柳の指先が雫を拾う。  優しい凪いた表情が、向けられた。 「終わりなんでしょ」 「うん、終わり」 「あたし帰るから、離して」 「まって」 「いやだ、離して」  綺麗に締めくくるなんて、できない。  ぼたぼたと流れる大粒の涙が、シーツに滲んで染みを作った。  あたしと対極な柳が、恨めしい。 「牡丹、最後まで聞いて」  身を捩らせて逃げようとするあたしを、自分の腕の中に閉じ込めた柳は、そっと耳元で囁いた。  ドンッ、花火が打ち上がる。  そして──、 「俺と、恋人になろう」  は? と間抜けな声が、口から零れ落ちた。  信じられない言葉に目を見開いたあたしの頬を、落ち着かせるように撫でた柳は、慈しむような瞳で額同士を合わせる。 「恋、人……?」 「そう。恋人になって、一緒にいよう」 「なんで……終わりって……」 「傷を舐め合うセフレは、終わり」  お互いの瞳が、お互いだけを見つめていた。  柳の言葉は、線香花火の花びらのように、琴線を揺らして、きらめきを塗す。 「自殺した菊に囚われて、苦しさばかり共有する関係を後悔してた。まるごと全部受け止めるから、セフレは終わりにして、今日から新しく始めさせてほしい。 ────俺は、牡丹と一緒に幸せになりたい」  一緒に、幸せになりたい。  その言葉に、なんだかやっと、本当の意味で救われた。
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