恋の人

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 煙草とお酒と、不特定多数との色事をやめた。  そうすると、如何にあたしの生活が自堕落で不摂生だったかを、日常からしみじみ実感した。  身体は軽くて、精神的にも安定して、無駄な出費がない。誇張していいなら、羽が生えたくらいに毎日が充実してると言える。生活が激変した。 「柳、塀の上みて」 「……猫だ」 「犬派? 猫派?」 「牡丹派」 「……」  そして柳も、激変した。  以前は、見た目の淡泊さが性格にも表れていて、齟齬を感じることはなかった。  口数が少なくて、能面は言いすぎだけど、無気力をまとったような顔を常にしてる。よく言えばクールな男。悪く言うと、面白みに欠ける男。  それがどうしてか。恋人になった途端、ときどき変なことを言うようになって、やたら面白い。 「ねぇ、わざと?」 「なにが」 「素でボケてくるの」 「ボケたつもりないけど」  片手にスーパーの袋、片手にあたしのを手を掴んでいる柳は、真面目な声でそう言い放った。  恋人になって数ヶ月。  柳は、淡白でもつまらなくもないことを知った。
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