3人が本棚に入れています
本棚に追加
煙草とお酒と、不特定多数との色事をやめた。
そうすると、如何にあたしの生活が自堕落で不摂生だったかを、日常からしみじみ実感した。
身体は軽くて、精神的にも安定して、無駄な出費がない。誇張していいなら、羽が生えたくらいに毎日が充実してると言える。生活が激変した。
「柳、塀の上みて」
「……猫だ」
「犬派? 猫派?」
「牡丹派」
「……」
そして柳も、激変した。
以前は、見た目の淡泊さが性格にも表れていて、齟齬を感じることはなかった。
口数が少なくて、能面は言いすぎだけど、無気力をまとったような顔を常にしてる。よく言えばクールな男。悪く言うと、面白みに欠ける男。
それがどうしてか。恋人になった途端、ときどき変なことを言うようになって、やたら面白い。
「ねぇ、わざと?」
「なにが」
「素でボケてくるの」
「ボケたつもりないけど」
片手にスーパーの袋、片手にあたしのを手を掴んでいる柳は、真面目な声でそう言い放った。
恋人になって数ヶ月。
柳は、淡白でもつまらなくもないことを知った。
最初のコメントを投稿しよう!