恋の人

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 木枯らしがあたしたちの合間をすり抜ける。肌を刺すような寒さが、冬の到来を知らせていた。吐く息は白くて、あの夏の空気はどこにもない。 「鍋、楽しみだね」 「作るのも簡単だしな」 「チゲ食べたことある?」 「ある」 「辛いっけ?」 「ピリ辛くらい」  家までの帰り道。  前を向いて歩く柳を盗み見すると、無表情に見えて口元が少し緩んでいた。  今日も、伸ばしっぱなしの金髪の上に、黒い帽子を被らせ、首からヘッドホンをぶら下げている。シンプルなのに様になってるのは、イケメンの特権だ。 「ただいま」  柳の部屋の玄関で、「ただいま」を揃わせる。  お互いに顔を見合わせて「おかえり?」なんて言いながら靴を脱ぎ、部屋の中へ。 「水冷た、手凍える」 「俺、暖めてあげるけど」 「なにで?」 「手を繋いで」 「それ家の中でも繋ぎたいだけじゃん」 「まぁ……」  否定しない柳は、すっと目を横に逸らした。  あたしが繋がないよと言ったことに「そ」なんて一言で返して、なんでもなかったように袋の中の食材を冷蔵庫にしまっていく。  心做しか、後ろ姿が少し寂しそう。
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