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あの前置きからは、全く予想できなかった展開。
柳は真顔で冗談を言うタイプだけど、今の空気的に本気っぽい。窺われるような双眸に耐えかねて、あたしは「同棲ってこと?」と確認してみた。
「そのつもり」
「同棲したいの? なんで?」
「なるべく一緒にいたいからだけど」
以前の柳からは想像できない、素直な甘さ。
あたしも素直喜んで頷きたかったけど、驚きと困惑がでかすぎて黙り込んでしまった。
脳の処理が追いつかない。
「柳、あたしも誰かと付き合うのはじめてだから基準とかわかんないんだけど、大学生で同棲って普通?」
パニックのまま訊けば、食い気味に
「普通」
と返される。
「でも同棲ってなると親にも……」
「親にはもう話してるし」
「…………え?」
え? まって。親に、もう話してる……?
純粋なほど真っ直ぐな目で見てくる柳に「親にどこまで話したの」と訊けば「全部」と言われ、混乱に混乱が重なった。
「結婚を前提に付き合ってるって話した」
「……え、えぇ」
「喜んでた。今度実家遊びに来てって」
完全に、外堀を埋められている。
嬉しいやら不安やらが複雑に入り乱れて、あたしは最終的に天を仰いだ。
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