3人が本棚に入れています
本棚に追加
数分の沈黙。
とりあえず起きてる事態を呑み込むために時間を費やしたのだが、それが悪かった。
「……勝手に、ごめん」
何を勘違いしたのか、柳が謝ってくる。
あたしが嫌がってるとでも思ったのか、鍵を回収しようとしてきたので、慌てて手の中の鍵を抱きしめて隠し、首を横に振って否定した。
「嫌とか思ってない」
「……」
「嬉しい、あたしも一緒に住みたい」
「……そっか……」
表情筋を動かさない柳が、あたしの言葉で顔を喜色に染めて、口元をゆるりと綻ばせる。
色々思うところはあるけれど、疑いようがないくらいにあたしを大切にしてくれる柳のことを、あたしも幸せにしたいと心から想った。
「あたし、」
「ん?」
「────柳と出会えて、よかったな」
口をついて出た本音。
多幸感に浸ったまま隣に視線を向けると、目を見開いた柳が、ぼふんっと爆発したように、首まで真っ赤になって照れている。
「今照れるんだ」
「……っ」
「ふは、幸せだな〜」
「っ、ずる」
柳と過ごす人生は、きっと愛と幸せに溢れてるね。
──俺も幸せ、と囁いた唇にあたしはそっとキスをした。
最初のコメントを投稿しよう!