恋の人

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 数分の沈黙。  とりあえず起きてる事態を呑み込むために時間を費やしたのだが、それが悪かった。 「……勝手に、ごめん」  何を勘違いしたのか、柳が謝ってくる。  あたしが嫌がってるとでも思ったのか、鍵を回収しようとしてきたので、慌てて手の中の鍵を抱きしめて隠し、首を横に振って否定した。 「嫌とか思ってない」 「……」 「嬉しい、あたしも一緒に住みたい」 「……そっか……」  表情筋を動かさない柳が、あたしの言葉で顔を喜色に染めて、口元をゆるりと綻ばせる。  色々思うところはあるけれど、疑いようがないくらいにあたしを大切にしてくれる柳のことを、あたしも幸せにしたいと心から想った。 「あたし、」 「ん?」 「────柳と出会えて、よかったな」  口をついて出た本音。  多幸感に浸ったまま隣に視線を向けると、目を見開いた柳が、ぼふんっと爆発したように、首まで真っ赤になって照れている。 「今照れるんだ」 「……っ」 「ふは、幸せだな〜」 「っ、ずる」  柳と過ごす人生は、きっと愛と幸せに溢れてるね。  ──俺も幸せ、と囁いた唇にあたしはそっとキスをした。
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