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とくに、夏が好きだったあたしは、菊ちゃんと涼しい縁側でスイカを食べたり、畳の上でごろんと寝っ転がって本を読んだり、扇風機の前で「あー」と声を出して遊んだことを、鮮明に覚えている。
菊ちゃんは身体が弱かったから、走り回ったり虫を捕まえたりなんて遊びはしなかったけど、それでも楽しかった。
「中学の3年間だけ、こっちにいるんだ」
線の細い穏やかな菊ちゃんは、ずっと一緒にいたいと願うあたしに、眉を下げて言った。
鈴のような音で笑う人だった。
都会から来たなら、田舎の娯楽のなさに辟易してもおかしくないのに、あたしみたいな子どもとも楽しそうに遊んでくれる菊ちゃんは、濁ってない透明のような性格。
澄んでいて、心地よくて、安らぐ。
あたしは、ほんとうに、菊ちゃんが大好きだった。
「菊ちゃん、大好きだよ」
その言葉は幼心に似ていたけど、実際は清らかな恋心で、無垢な子どもを盾に欲求を満たしていた。
いっしょに遊んで、
いっしょに寝て、
いっしょに勉強して、
兎角するうちに、3年という短い猶予は、駆け足で訪れた。
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