から揚げ屋のオジサン

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 しかし月に40万円ほど稼いでいるのに何故か金欠である。答えは簡単スマホゲームの課金やら何やらで毎月25万~30万円ほどつぎ込んでいるからである。よって家賃や学費や光熱費、通信費、食費、その他諸々を払ったら残りは少なくから揚げの数が減って行くのだ。  ん?  足元に赤い絨毯の帯が転がって来た。  転がり元を見るとロールスロイスのリムジンが停まっていて赤い絨毯はそこから伸びてきているようだ。  その絨毯の上を大きな赤いフロッピーハットをかぶり白いヒラヒラのワンピースを着用したお嬢様が黒くて長い艶々な髪を揺らしながら近寄って来た。 「そこの小市民、おどきなさい」  小市民? 「こちらのお店はたいへん美味と聞きましたわ。なのでわたくしにわたくしだけの最上級の特別なフライドチキンを作ってよこしなさい」  私はから揚げ屋のオジサンと目を見合わせた。そしてオジサンが口にグウの手を当てながら話始めた。 「コホン、さて、これは困りましたね。私の作るから揚げは均一に美味しいのでどれを食べても最上級なのでよ。ですので全てが特別なのです」
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