夢うらら

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却下された以上、悪足掻きも無駄に等しい。 「弱点を見つけて、立場逆転されないようにしなきゃ!」 と、気持ちを切り替えた私は、水無瀬さんについて調べてみることにしたのです。 ※お姉ちゃんが持っていた書類を読み込んだだけの簡単な調査 早速クリップでパチッと留めた履歴書、契約書、調査書に目を通す。 水無瀬 彗。21歳で私の3つ上。 剣道四段、英会話は日常程度レベル。 業界では有名人らしく、手荒で口も悪ければ、女癖も悪いとの噂有り。 ただ、仕事が的確で早くて、総合的な評価が高いためオファーが絶えないらしい。 「手荒で〜」の一文を除けば、お姉ちゃんの言ってるように“すっごく優秀な方”だ。途中の「女癖」は見なかったことにします。 「………ふみ、頑張れる?」 私を思ってくれたお姉ちゃんを困らせたくない。子どもじゃないんだから、ワガママは今日でお終いにするの。 「よしっ!」ぱちんと頬を叩いた。 ・水無瀬さんに苦手意識を持たないこと ・大人の対応を心がけること そう決めたのに、 「ふみさん、どうかしました?俺の顔、なにか付いてます?」 「…………いえ、なにも…綺麗、です(“ふみ”って呼んでくれた。のに、声小さくなっちゃった)」 翌朝、お迎えに来た水無瀬さんが《黒髪ストレート》になっていたものだから、一瞬にして、ころんと心を奪われてしまった。 《黒髪》の魔法にときめいても、恋心は奪われないはずだった。 初恋は“私を一途に思ってくれる素直で可愛い人”に捧げると決めていたから。
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