夢うらら

3/24
前へ
/66ページ
次へ
4杯目のはちみつレモンを飲みながら、ぐすっと鼻を啜った。酔いが回っているのか、さっきからふらふらする。 「あ。ふみ、顔真っ赤。めっちゃ酔ってるわ」 周子ちゃんが、けらけらと笑い声を転がした。 「………(ゔっ。ぼうっとする。私なんて怒られたらいいんだ)」 腕に付けたアップルウォッチに視線を落とし、ほんのり染まった私のかんばせを覗き込んだ。 「ふーみ、スマホ貸して?」 「い や で す」 「って言うてもなあ。門限まで後1時間やし、こんなに酔ってたらお母さん心配するんちゃうかな?酔い覚ましてから帰ろうか?」 そうだ、お母さんが心配する。 ただでさえ、お姉ちゃんが自由奔放で困っているのに、私までこんな風になってしまったら、倒れるかもしれない…のは、おじいちゃんの方かな。 面倒なことは頼りになる弟に投げつけて、いっそのこと私もお姉ちゃんみたいに羽目を外そう、なんて悪い考えが浮かんだ。 …けど却下、親を困らせるのはダメだ。 私の理想とする立派な大人像が「ふみ、やめなさい」と忠告してくれたおかげで、頭が一瞬だけ覚めた。 そして気がつけば、周子ちゃんにパスコードを解除したスマホを渡していたのだ。吉とでるか凶とでるか。 「あっ。もしもし、すいません。水無瀬彗(みなせけい)さんですか?ふみの友人の———」 ああ。よりによって電話をかけた相手が、絶賛ケンカ中の彼だなんて。 瞼がとろんと、夢に誘われて落ちていく——— のを、彗は許してくれなかった。 話し終えた周子ちゃんが「ふみに代わってほしいんやって」と、スマホを私の耳に当てた。 ひんやり冷たい感触が肌を刺激した。嫌な予感しかない。覚悟を決めましょう。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加