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step.01
恋をしたことがないもので。
◇
──「今回の奴、どのくらい続くか賭けようぜ」
麗らかな日中。
ぽけっとした顔で講義を受けていた灯は、背後からの声に振り向いた。
にまにまと茶化すような表情の友人、柊吾とうごを睨む。しかし、飄々とした態度を崩さない柊吾は意に介さない笑みで灯を見下ろしてきた。
「おいおーい、怒んなよー」
「……」
「クズな初音ちゃーん」
「うるさい同類」
「ハッ、クズな自覚あんのもおもしれ」
仲がいいからこその軽口だが、面と向かってクズだと言われると灯も腹が立つ。
無視して前に向き直せば、これまた柊吾と同じくらい友人歴の長い穂乃果ほのかが「誰と付き合ったんだっけ?」と聞いてきたため、灯は一週間前に付き合った男の名をあげた。
「法学部2年の乙藤紫苑くん」
「法学部の乙藤……? 知らないや。でも法学部ってことは頭良いじゃん。あかりん面識あったの?」
「ない。急に告白された」
「すご。ま、あかりん有名人だもんね。イケメン?」
「美形。王子さまっぽい。性格も穏やかで、私を選ばなそうな感じ」
「自分で言う? それ」
穂乃果が灯の言葉に的確に突っ込む。
灯も倣うように笑えば、新着の通知がスマホの画面に表示された。
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