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通知欄にある名前は、乙藤紫苑。
連絡先を交換してから、今のところ途切れずやり取りが続いている。
「お? ラブラブだねえ」
「どこがだよ」
画面を覗き込んできた穂乃果が、全くラブのないやり取りを見てそう言い、柊吾が灯に代わって答えた。
どうしてこうも悪ノリする友人が多いのだろうと灯は肩を竦めるも、気の知れた仲なのでけっきょくは許してしまう。
何度もブリーチして明るくなった穂乃果の髪を勝手に触りながら、灯はふと疑問を零してみた。
「条件伝えたとき、紫苑くん笑ったんだよね」
「へ?」
「何でだと思う?」
「まって。なにそれ怖い」
「あんな反応初めてだったから、少し不思議」
灯は、いつも告白してくる人に事前に浮気を容認しろと伝えている。それが無理なら、付き合わないと。
基本的に、渋々容認するか、好きにさせると自信満々に容認するかの2パターンなので、穏やかに笑って頷いた乙藤紫苑はかなり異様だったと言える。
──しかも、
「付き合ってから一度も会ってないんだよね」
他愛ないやり取りをするだけで、会おうと誘われもしない。
それが、灯にはいちばん謎だった。
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