160人が本棚に入れています
本棚に追加
唐突に響いた、明るい声。
フェンスと壁に挟まれた路地裏で、俯いていた灯は自然と足を止めて前を向いた。
「(……やっぱシフト変わらなきゃよかったな)」
目の前には、天敵となったツインテールの女の子。
ストレスが限界寸前だった灯は、絶叫しながら暴れてやろうかと思ったが、それすらもめんどくさくなったので、無言無表情のまま対峙した。
「あなたが悪いんですよ。クズのくせに、紫苑くんと別れないから」
憎々しげに灯を睨んで言い放つ彼女は、背に2人の男が従えている。
呆れる灯を前に「もうヤッていーの?」なんてふざけたセリフをニヤニヤ笑う男たちが吐いた。
「……鈴木さん、だっけ。待ち伏せなんていい趣味してるね。私のストーカー?」
「あなたと別れたら、紫苑くんはわたしのもの」
「…………話聞いてる?」
「どうして、あんたみたいな、クズに負けないといけないの」
「(……なんか、目イってない?)」
口ぶり的に、振られた腹いせでしかない。
腕を組んでいた理由はわからないが、紫苑が彼女と浮気していないことを確信した。
最初のコメントを投稿しよう!