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裏口まで戻って、マスターに助けてもらうか。じりじり近寄ってくる2人の男を前に、灯は迷う。
だが、意外と逃げ切れるのでは──、と安易に後ずさったのが良くなかった。
ばしん、衝撃で頭が揺れる。
「……痛いんだけど」
「私だって、あんたのクズな友だちに殴られたんだからおあいこでしょ」
「男女の差ってものがあると思うよ」
逃げようとしたことを勘づかれたのか、すぐに灯は腕を掴まれて、もう1人の方に頬を殴られた。
多少、力の加減はしてもらえたようだけど、口の中に血の味が広がってきもちわるい。
「乱暴にすんの興奮するわ〜」
「(……変な趣味を持ってるやつ多すぎ)」
聞いてもないのに、ペラペラと話す男。
雑に灯をフェンスに押し付けた男は、支配欲や征服欲が強い方なのだろう。興奮したようにもう1人の男に話しかけている。
自由にやらかしたツケが回ってきた、と灯は諦めかけるも、脳裏に浮かぶのは紫苑の悲しそうな顔。
「──……っ、触んないで!」
次の瞬間、灯は抵抗していた。
急に態度を変えた灯に戸惑う男たちを前に、「誰か助けて!」と灯は叫ぶ。
そして、
「誰かじゃなくて俺の名前呼べっての」
クズな友人──柊吾が、男を吹っ飛ばした。
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