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ただ、灯が殴られたことを看過できない結兎が、意識のない男たちを、げっしげっしと、ボールのように何度も蹴るから、止めに入らずにはいられない。
「りぃちゃんの顔、傷つけやがって。煮て焼いて刻んでやる」
「料理?」
「安心してね。証拠は残さず綺麗に処分するから」
「物騒」
灯は反射的につっこむが、今日はもう疲れた。
ぼんやり柊吾と結兎が会話するのを眺め、近くの柊吾に寄りかかる。
夜空を見上げると、分厚い雲が停滞していた。
「今日はテメーに譲ってやるよ。後始末はこっちでやるから、さっさとりぃちゃんの手当てしろ」
「譲るもなにもじゃんけんで決めただろーが」
「はいはい、うるせ〜。……りぃちゃん、後で俺んとこにも来てね」
「ん、ありがと」
最終的に、灯はじゃんけんに勝った柊吾に手を引かれて、路地裏を後にした。
転がる3人の後始末は結兎がしてくれるらしい。任せて申し訳ないけど、適任ではあった。
「……ったく、なんでお前が殴られんだよ」
ぎゅう、と灯の手を強く握ったまま歩く柊吾は、殴られたことが相当不服なのか不満タラタラ。
家に着くまで、文句は途切れず続いた。
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