step.05

7/15
前へ
/99ページ
次へ
 大学生らしい1Kの黒とグレーで統一された部屋。  何度も訪れたことある部屋のベッドで、灯は器用な手つきの柊吾に頬を冷やされていた。  帰ってくるまでは永遠と不満を零していたくせに、着いた途端無言になった柊吾の顔を、灯はどうするべきかと見つめる。 「……怒ってる?」 「怒ってねぇよ。お前には」 「じゃあ誰に?」 「知らね」  むくれてる柊吾は、言いたくないのだろう。  腫れて熱をもってる灯の頬に、タオルで巻いた保冷剤を当てながら、頑なに視線を外してくる。 「今のお前見たら、穂乃果が発狂すんな」 「暴走したら一緒に止めてね」 「……そんなんすっかよ。庇う必要ねぇだろ」  そんなに紫苑が嫌いなのだろうか、と苦笑いした灯は頬の痛みに顔を顰めた。  それを見て、舌打ちをした柊吾は、ぽつり。 「普段なら別れてんだろ、もう」  と、力なく言う。  たしかに、今までなら別れを切り出していた。柊吾の言いたいこともわかる。でも──、 「うちの紫苑くん、かわいいから手放し難くて」  自覚した感情を、無視はできないと悟ってしまった。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加