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しかし、紫苑は覚悟を決めていたようで、ぎゅっと両手を握りしめた後、スマホの写真を見せてくる。
ぽっちゃりとした身体。長い前髪。漂う陰の空気。
「(……ん? この男の子って)」
明るい日の下。
圧倒的な造形美の紫苑の容姿と、スマホに映し出された男の子の容姿を、灯はまじまじと見比べる。全然似ていない。
似ていない、けど──……
「紫苑くんが、ふじくん? 私が働いてた喫茶店で、常連だった、あの男の子?」
「……うん」
「は?とんでもない垢抜け」
まさかも、まさか。
弱々しく頷いた紫苑が肯定したことで、灯は大いに混乱した。
「いや! なんで言わないの! ビフォーアフターが違いすぎるから気づけないよ! もうっ、はああ!!?」
「……げ、幻滅した?」
「するわけないじゃん! バカなの!?」
普段は低燃費の灯が、珍しくキレ気味に叫ぶ。
そして、そのままうっかり。
「見た目で好きになったんじゃないし!!」
………………………………あれ?
勢いに任せて好意を告白した灯は、ワンテンポ遅れて己の失態に気づく。蹲りたくなった。
ぱちくり、紫苑は目を見開いて固まっている。
「す、好き……? えっ? 誰のこと? え?」
お前以外にいるか!
情緒不安定な灯は、脳内で突っ込んだ。
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