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暫しの沈黙。
意を決して告白したというのに、固まる紫苑がなにも言ってくれず、灯は「いい?」と再び問うも──。
「え、えっ? なんで……?」
「……私を羞恥心でころすつもり? 何回言わすの」
「だ、だって! 俺に、都合が良すぎて、」
「ああー! もうっ!!」
困惑してる紫苑は、とてつもなく面倒くさい。自己評価が低すぎるせいで、好意をもたれてると思い及ばないのだろう。困った男だ。
まあ、でも、恋って面倒なものなのかも。
ベンチに隣同士で座っていた灯は、立ち上がって紫苑の目の前に立った。
そして──、
「紫苑くん、好きです。付き合ってください」
まっすぐ、紫苑を見つめて、告白した。
心臓が高鳴りすぎて苦しいし、いまだかつてない恥ずかしさに襲われている。初めての恋に戸惑ってることを悟られないよう、灯はこっそり深呼吸をした。
「──……っ」
顔を真っ赤にして、段々と瞳を潤ませる紫苑が、愛おしい。
堪えきれず泣いてしまった紫苑の涙を、灯は拭おうとして手を伸ばしたが、逆にその手を捕まえられてぎゅうっと身体ごと紫苑の腕の中に仕舞われた。
「────俺も、灯ちゃんのこと大好き」
降ってきた言葉が、甘く、とろける。
両思いだ。我慢はいらない。
恋人同士のふたりは、どちらからともなく、求め合ってキスをした。
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