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「きもちいーね、キス」
満足するまでキスをした灯は、にこにこと大満足な笑顔を浮かべる紫苑の頭を撫でてあげる。
「俺たちって、両思いの恋人同士……?」
「そうだね」
「やきもち妬いても我慢しなくていいの? 俺のものって牽制してもいい?」
「ん、どうぞ」
「す、すごい……! 幸せ……!」
すりすりと頬を寄せてくる紫苑が可愛すぎて参る。
嬉しくて感極まったのか、また子どもみたいに泣き出した紫苑を、今度は灯が抱きしめた。
通りすがりの親子に目撃され「ママー! みて! ラブラブ!」「あらまぁ」「男の子ね! 泣いてた!」と会話のネタにされてるけど、まあいいとしよう。
「他の人と、キスしないで」
「しないよ」
「俺以外に身体、許さないで」
「もちろん」
「合鍵、もらってほしいな」
「ふはっ、かわいいね」
「……大好きだよ、灯ちゃん」
これまで耐えて我慢してきた反動からか、目が合う度に「好き、大好き」と紫苑は破顔して伝えてくる。
なんでも許してしまいそう、と紫苑と手を繋ぎながら歩く灯は思った。
「──あ、クズ卒業だ」
「おめでとう」
「紫苑くんも、今日私で卒業しようね」
「エッ」
7月の別名、愛逢月。
世にも数奇なバカップルが、爆誕したのだった。
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