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step.06
初恋同士、バカップル。
◇
────灯がクズを卒業して、3週間。
晴れてバカップルへの道を歩みはじめた2人は、人目も憚らず濃い桃色の空気を出して、大学構内でイチャついていた。
「紫苑くん、かわいいけどあついな」
「あつい? でも俺、灯ちゃんと片時も離れたくない」
「そっか。素直でかわいいね」
「頭撫でられの好き、もっとして」
「いいよ」
甘々も甘々。激甘。
有名なバカップルに転身した2人は、隙あらばイチャイチャ、べたべた。
自分のかわいさが武器だと気づいた紫苑と、そんな紫苑を甘やかす灯は、喩えるなら、〝混ぜるな危険〟を全力で混ぜてしまった、そんなところだ。
細くて折れそうな灯の腰を抱いてる紫苑は、頭を撫でられてきもちよさそうに目を細めている。
「あはは、とろとろだ」
誰も踏み入れない、ふたりの世界。
気の抜けたように笑う灯が、そっと背伸びをして顔を近づけた。
しかし、
「おい、そこのバカップルやめろ。もはや公害になってんだよ」
「穂乃果のあかりんに甘えてんな! くそバブ!」
ここでようやく、猛者が現れる。
呆れ顔の柊吾と不機嫌な穂乃果が、揃って紫苑の後頭部をしばいた。
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