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スコーン、と後頭部を殴られた紫苑は、びっくりしたのか目を丸くしている。
でも、すぐさま天敵がいると気づいて、拗ねた顔でそそくさと灯の背中に隠れた。こういうかわいさが、灯のツボだ。
「もう少しで、灯ちゃんにキスしてもらえそうだったのに」
じと、と穂乃果たちに文句を言う紫苑は不服そう。
「あとでいっぱいしてあげるよ」
「やった」
「はー!? こいつ猫かぶりしてる! あかりん騙されないで!」
頭ではわかっていても、紫苑のかわいさに絆されてしまう灯は、またつい甘やかしてしまった。
ちなみに、紫苑と穂乃果は、柊吾と結兎並に犬猿の仲である。顔を合わせると、即ゴングがなるのだ。
灯がクズを卒業して、真剣に紫苑と付き合うと2人に報告した時も、
「お前、コイツ泣かせたら殴っからな」
「穂乃果は、なにもなくても定期的にお前をぶん殴るって決めた。キライ!!」
と、穂乃果だけ、やたら敵愾心でメラメラだった。
けど、どちらも灯からして見ればかわいいの分類だから、言い合いをしてたところで、子犬がキャンキャン吠えてるのと一緒。微笑ましいだけ。
「講義おわったら迎えにいくね」
「来るな! 童貞!」
「……灯ちゃんでとっくに卒業したし」
「ハァ!? ウッッザッッッ!!」
かわいいな、と暢気に眺めてる灯の頭を、苦労人と化した柊吾がポンっと叩いて諌めた。
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