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◇
「……今日、一緒にお風呂入りたいな」
バックハグで抱きついてきた紫苑が、肩に顎を置いて甘えてくる。
紫苑の家のキッチン。ほとんど半同棲状態で、食器の場所も把握してる灯は、珈琲の入ったマグを片手に甘えん坊の彼氏の頭を撫でた。
「んー、アワアワのお風呂にしよ」
「泡風呂!」
窺うような双眸が、灯の返答によってキランと輝く。
柔らかな灯の髪に顔を埋めた紫苑が、すりすりと猫のように甘えてくるから、マグの中の黒い液体が振動で揺れた。
危ないよと言いたいけど、嬉しそうな紫苑を前にすると、まるごと許してしまたくなる。
しまいには、ちゅっ、と灯の首筋に吸い付いて跡を残してくるから、かわいさに撃沈した。
「ついた」
にっこり、満足そうに口角を上げる紫苑。
灯の身体には、たくさんの紫苑の所有印が残っているというのに、まだ跡をつけたがるのかと独占欲に笑ってしまう。
「紫苑くん、キスマークつけるの上手くなったね。最初はやり方わかんなくて、泣いてたのに」
「……っ、いっぱい練習したからもう泣かない」
「うん、私でね」
「そうだよ。……あのさ、お風呂で俺にも同じくらい跡つけてほしい」
「内出血だらけになるけど」
「だめ?」
「だめじゃないね」
くすくすと、笑いが止まらない灯は、紫苑の唇に自身の唇を重ね合わせた。
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