step.06

3/19
前へ
/99ページ
次へ
◇ 「……今日、一緒にお風呂入りたいな」  バックハグで抱きついてきた紫苑が、肩に顎を置いて甘えてくる。  紫苑の家のキッチン。ほとんど半同棲状態で、食器の場所も把握してる灯は、珈琲の入ったマグを片手に甘えん坊の彼氏の頭を撫でた。 「んー、アワアワのお風呂にしよ」 「泡風呂!」  窺うような双眸が、灯の返答によってキランと輝く。  柔らかな灯の髪に顔を埋めた紫苑が、すりすりと猫のように甘えてくるから、マグの中の黒い液体が振動で揺れた。  危ないよと言いたいけど、嬉しそうな紫苑を前にすると、まるごと許してしまたくなる。  しまいには、ちゅっ、と灯の首筋に吸い付いて跡を残してくるから、かわいさに撃沈した。 「ついた」  にっこり、満足そうに口角を上げる紫苑。  灯の身体には、たくさんの紫苑の所有印が残っているというのに、まだ跡をつけたがるのかと独占欲に笑ってしまう。 「紫苑くん、キスマークつけるの上手くなったね。最初はやり方わかんなくて、泣いてたのに」 「……っ、いっぱい練習したからもう泣かない」 「うん、私でね」 「そうだよ。……あのさ、お風呂で俺にも同じくらい跡つけてほしい」 「内出血だらけになるけど」 「だめ?」 「だめじゃないね」  くすくすと、笑いが止まらない灯は、紫苑の唇に自身の唇を重ね合わせた。
/99ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加