step.06

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「紫苑くんは、お兄さんがいるんだっけ」 「……うん」  よしよし、と紫苑の髪を梳いて、安心させるようにさりげなく聞いていく。 「何歳差?」 「7歳差だよ。今26歳」 「へえ、社会人」 「弁護士してる。昔から優秀で、勉強も運動も勝ったことない」 「ふうん」 「ん、ここも兄さんが買った部屋」 「そうなんだ」  どんどん元気がなくなる紫苑は、優秀なお兄さんと比べて、コンプレックスを感じているのだろう。  紫苑は法学部だ。自ら進んでその道を選んだのか、選ぶしかなかったのかは、わからない。  あまり紫苑を傷つけたくない灯は、話したくなったら話してもらおうと、気持ちを切り替えた。  ──の、だが。 「あ、どうしよう兄さんからメッセージ来てた」 「なんて?」 「終電逃したから泊めてって……」  ピンポーン。  タイミングよく鳴ったインターホン。  灯と紫苑は、お互い無言で見つめ合い、どうするべきか考えた。無視は良くない。  そもそもこの部屋はお兄さんが買った部屋で、紫苑は借りてるだけだ。
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