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彼氏の兄。つまり義理の兄になるかもしれない人。
クズを卒業した灯は、紫苑のためにも失礼な真似はできないと、覚悟を決めて立ち上がった。
「私が鍵開けるよ。ついでに挨拶もする」
「えっ、ちょっとまって!」
「大丈夫、心配しないで。紫苑くんはまだ動けないでしょ、そこで寝てて」
「で、でも……!」
普段、カルガモみたいに後を追ってくる紫苑は、灯と離れるのが耐えられないらしく、家の中でもどこでもくっついて追ってくる。だが今は動けない。
それに。なんとなく、なんとなくだが、灯は紫苑の兄がブラコンなのではないかと思っている。
この予想が当たってるなら、第一印象は大事だ。
鏡で変なところがないか確認し、灯は髪を手櫛で整える。
「や、やっぱり、帰ってもらわない?兄さんも、驚くと思うし……」
「もう部屋の前まで来てるっぽいしむりでしょ。いってきます」
「う、ん……」
慌ててる紫苑の頭を撫で、キスでパワーをチャージして、いざ尋常に。
玄関先に向かった灯は鍵を開け、視線を上げ──、
「え?」
「は?」
「……君が、なぜこの部屋にいる」
「……うそっていって……」
悪魔のような美しい男を前に、最悪だと頭を抱えた。
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