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意味深に言うのはわざとなのだろうか。
無表情の蘇芳を前に、灯はうんざりしたきもちで首を横に振った。
「……ふ、修羅場になるな」
綺麗に片方だけ口角を上げた蘇芳。
どうみても、あのピュアな紫苑の兄とは思えない。弁護士だからかは知らないが、蘇芳はどちらかというと近寄り難い冷たいイメージを周りに与える人だ。
「俺との関係は、秘密にしておくか?」
「ばれたときに拗れます」
「……なんだ。あいつに本気なのか」
「クズを卒業するくらいには」
「それは妬けるな」
うそをつけ、と灯はジト目を蘇芳にぶつけた。
「(さて、どう伝えるべきか……)」
──蘇芳と関係を持っていたのは1年前のこと。
高校卒業後、灯は年齢を偽ってキャバ嬢なるものをしていた。そこで上司に連れてこられて虚無になっていた蘇芳と出会い、なんだかんだ関係を持った。
正直、身体の相性という点では、蘇芳がぶっちぎりでナンバーワン。
お互いズブズブにはまって、週1のペースで会っていた。
ようは、元セフレだ。
「はー……、最悪の再会……」
関係が切れてるとはいえ、紫苑をどうやっても傷つけてしまう最悪の事態に、灯は天を仰いだ。
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