step.06

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 そんな絶体絶命の灯の腰を、なぜか色気を出しながら抱いてくる蘇芳。  切れ長の瞳が灯を捉え、誘惑するように瞬いた。 「後にも先にも、俺が振り回されて夢中になった女はお前だけだ」  なんて破壊力のある口説き文句。と、微塵も揺すぶられない灯は冷静に思う。  残念ながら、紫苑がかわいくてたまらないので、他の男は眼中にないのだ。 「ごめんなさい、オニーサン」  ゆるり、一線を引いた灯に、蘇芳は瞠目した。  腰を抱いてる手を、ぺいっと雑に退けて、灯はわかりやすく蘇芳と距離をとる。  けど、行動に移すタイミングが遅かったようだ。 「──え」  唖然とした声。  立ち尽くす紫苑に、灯は身を固くした。 「……な、んで?どういうこと?」 「昔、彼女と関係を持っていた。今は切れている。再会したのは偶然。以上だ」 「ちょ、蘇芳さん」 「誤解を解くには簡潔的な方がいい」  ぽてぽて。寝室から歩いてきた紫苑は、蘇芳の要点だけ話した事実を、ゆっくりと理解していく。  そして、事態を飲み込めたのか、瞬きした瞬間に決壊するくらいの涙を目に溜めて、ぎゅっと唇を噛んだ。  逃げるように足の向きを変えた紫苑は、そのまま走り出し、 「いてっ」  ドテン、とドアに突っ込んで転ぶ。
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