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終電を逃して部屋にやってきたのは、弟の顔を見に来る口実だったのだろう。
不器用に紫苑の頭を撫でてから「タクシーを拾って帰る」と颯爽と去っていった蘇芳の背を、灯は紫苑と一緒に見送った。
怒涛の展開だったが、なんとか丸く収まったらしい。
「……灯ちゃん、ベッドに行きたい」
玄関先、蘇芳を見送った紫苑が灯の手を握る。
俯いているため表情は見えないけど、声の音色は不安に揺れていた。元凶である灯は、罪悪感に苛まれつつも、あえて平静を努める。
「ん、いこっか」
灯が頷けば、頑張ってリードするように紫苑は寝室に向かい、ベッドに灯を押し倒す。
繋いだ手が、緊張で汗ばんでいた。
暗闇で、灯のサファイアの瞳が淡く輝く。見下ろしている紫苑の輪郭を、繋いでない方の手でなぞると、優しい口付けが降ってきた。
「……おれが、いちばんすき」
首、耳、胸、とキスを落としていく紫苑に、灯は抱きしめたい欲求を我慢する。
好きにさせてあげよう、と主導権を預けた。
灯の身体に、自分の身体を密着させた紫苑は、辿々しい手つきで愛撫していく。
そのまま、幸せに浸っていれば──、
「……なか、入りたい」
あまりに可愛いお願いに、灯はノックアウトされた。
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