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初恋は実らないというけれど、ふたり揃って実ってしまった。
「ねぇ、紫苑くん」
灯が名を呼べば、真っ暗な部屋に慣れた目が、紫苑の輪郭を捉えた。きっと、林檎のように火照っているんだろうけど、そこはお互い様である。
見上げると「ん……?」と汗を滲ませてる王子さまが動きを止めて、優しい眼差しを向けてきた。
「私以外に、触らせないで」
「うん」
「私以外に、興味もたないで」
「うん」
「私以外、好きになったらやだ」
落とした責任は、取ってほしい。
灯の心細そうな声に、あまく、とびきりの笑顔をみせた紫苑は、耳元で囁く。
「ようやく、ぜんぶ、俺のもの」
そう紡いだ紫苑に、落とした責任を取らされてるのは自分か、と灯は気づいてしまった。
「ふふ、俺の粘り勝ちでしょ?」
「そうだね。私の負けだ」
「俺、ずっと好きだったんだよ」
「うん、知ってる」
朝起きたとき、隣にいるのが、ずっと彼でありますように。
心も、身体も、とっくに紫苑のものになった灯は、押し寄せる幸せの波に、すべてを委ねた。
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