step.06

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 初恋は実らないというけれど、ふたり揃って実ってしまった。 「ねぇ、紫苑くん」  灯が名を呼べば、真っ暗な部屋に慣れた目が、紫苑の輪郭を捉えた。きっと、林檎のように火照っているんだろうけど、そこはお互い様である。  見上げると「ん……?」と汗を滲ませてる王子さまが動きを止めて、優しい眼差しを向けてきた。 「私以外に、触らせないで」 「うん」 「私以外に、興味もたないで」 「うん」 「私以外、好きになったらやだ」  落とした責任は、取ってほしい。  灯の心細そうな声に、あまく、とびきりの笑顔をみせた紫苑は、耳元で囁く。 「ようやく、ぜんぶ、俺のもの」  そう紡いだ紫苑に、落とした責任を取らされてるのは自分か、と灯は気づいてしまった。 「ふふ、俺の粘り勝ちでしょ?」 「そうだね。私の負けだ」 「俺、ずっと好きだったんだよ」 「うん、知ってる」  朝起きたとき、隣にいるのが、ずっと彼でありますように。  心も、身体も、とっくに紫苑のものになった灯は、押し寄せる幸せの波に、すべてを委ねた。
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