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「返して」
「むり。飲み込んだ」
「明日オムライス奢って」
「いいよ」
やった、食費が浮く。
勝手に食べられた、と空の銀のスプーンを見下ろしていたけど、どうやら新品になって返ってくるらしいから許すとしよう。
卵好きだし、2日連続オムライスも悪くない。
「変人同士の会話って、なんかすげーよな〜……」
「黙れノンデリ」
「ねえ! 俺! 彼氏だよ!」
「榴禾は変だけど、私は変じゃない」
「僕は至って普通です」
「こっえーよ! なんで自覚してねえの!?」
似てるところがあるのは認めるけど、隣の変人と纏められるのは癪だ。
私は人のオムライスを泥棒したりしない。他人のプライバシーを侵害したりもしない。とても真面目に日々暮らしている。
脱線した話の線路を戻すべく、煩い涼の口を那夢に塞がせた。
「……なんだっけ?」
「三つ編み奇人による猫耳事件」
「珍妙な事件だね」
「会話の進みが遅すぎてうざい。美愛は何をしでかしたわけ」
私が犯人みたいな言い方だ……。
犯人の自供を待つみたいに、那夢が目を細めて圧をかけてくるから、今朝の出来事を思い出して話す。
「朝、亜未くんを見かけて追ってたら柊吾先輩とやらがやってきて、そのあと彼らの仲良し軍団が登場。不注意で亜未くんの背中にぶつかったら、彼らに話しかけられて、衝突のお詫びで猫耳を……あっ、返してもらうの忘れてた」
「…………はぁ……」
話した通り、何もしていないんだけどな。
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