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────暦は、五月雨。
常緑樹の葉が、瑞々しい緑に変わる。少し前まで春爛漫の桜色の景色だったのに、照りつける太陽がもう夏の準備をしているから気分が滅入ってしまった。
どうせ梅雨と夏が同時期に来て、じめっと湿度を高めるんだから、春と秋もきっちり真価を発揮して頑張ってほしい。そうでなければ帳尻が合わない。
そう心中で文句を垂れながしながら、大学の中庭を歩いていると、突然舞い込んでくるラッキー。
「(……あの後ろ姿、亜未くんだ)」
後ろ姿さえも、イケメン。
何頭身か気になる足の長さと、色を抜いたハイトーンの髪色、服の裾から覗く筋肉質な身体。気怠げな歩き方なのに色気が滲んでいた。
ちなみに、正面からみるとオールバックにした長髪から見目麗しい彫りの深い顔を拝める。見たい。
背後を陣取っていた私は歩幅を広め、追い抜かす勢いで歩くも、
「よー、亜未。昨日はお疲れ〜」
彼の肩を、がしっと抱いて挨拶をした男の人。
1年生の私でも知ってる有名人の3年の先輩が現れたため、しゅるしゅる勢いを失速させた。
「あんだけ飲んでよく来れんね、柊吾くん」
「単位やべーし。あとあのクソバカップルが俺ん家でまだ飲んでてうるせぇの」
「穂乃果さんも潰されてなかった?」
「そ。生き残ってんの灯だけだわ。見ろよこれ、あいつ自分の彼氏におしゃぶり吸わせてたんだぞ。まじなんのプレイだよ」
「やば」
亜未くんの「やば」に同意である。
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