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スマホの通知音を無視して、雑音を排除して、限りなく亜未くんにだけ意識を向けて歩いた。
そして、
「いて」
彼の広い背中に、衝突。
思考の文字数が多い私は、亜未くんの生態観察に気が取られるあまり、どうやら距離を縮めすぎていた。
衝突事故を起こしてしまったせいで、校舎は目の前だというのに亜未くんを含め横並びに歩いていた集団の足が止まり、私の方に視線が向く。
視線の嵐が降り注いだ。
「ん? 美愛ちゃんだ」
「どうも」
「でた、三つ編みの子!」
「どうも」
「え、どうもしか言葉知らない?」
「ぶつかってすみません」
「あ、知ってた」
だれが、だれだ?
名前を呼んでくれた亜未くん以外知らないが、なぜか私は彼らに存在を認知されている。
亜未くんとは何度か話したことがあるし、三つ編み以外のバリエーションがない子、と直接言われたことがあるが、どうして陽キャの集団にまで知られてるのだろう?
「なあ〜、なんで三つ編み? ださくね? かわいいのにもったいない」
「……」
「無視ィ!?」
無視したわけじゃない、と亜未くんの友人Bに心の中で返答しつつ、私は肩にかけたトートバッグをがさごそ。
お目当てのものを見つけると、無言で装着した。
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