Lv1 ▷ ふむふむ

7/19
前へ
/21ページ
次へ
 疲れた様子でため息を零す先輩の顔をじっと見つめていると、急に亜未くんの手が割り込むように入ってきて、私の前でひらひらと揺れる。 「俺の名前、覚えてる?」  何故、覚えてないと思うのだろう。  ゆるりと口角を上げて、どことなく妖しさを漂わせる彼の名を、私は声に出して発した。 「(すめらぎ) 亜未(あみ)」  語感のいい名前をフルネームで答える。けれど、また何かが彼のツボに入ったらしく、珍しく素で笑ってる姿を見れてしまった。 「私、何か変ですか?」 「ううん、面白くて最高。卯月(うづき) 美愛(みあ)ちゃん」 「フルネームのお返し、ありがとうございます」 「ふはっ」  面白いことをした覚えはないけど、楽しそうだからよしとしよう。  もう少し話していたい気持ちもあるけど、あと数分も経たずに授業がはじまる。  気づけば四方八方から視線が集中しているし、変なことをするなと友人に言い付けられてるから、ここはひとまず撤退だ。 「それでは」  猫耳の回収を忘れ、走る。  そんな私の背後で「三つ編みの奇人ちゃーん!」と誰かが叫んでいた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加