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身代金目的
「なによ。欲張りねえェ」
アンジェラは横目でボクを睨んだ。
「あのですねえェ。どっちが欲張りなんですか。だけど、どうなったとしてもボクは誘拐なんかしませんけど」
架空のことで揉めても仕方がない。
「えェ、どうして?」
アンジェラは不思議そうに首を傾けた。
「良いですか。アンジェラお嬢様!」
「ぬウゥ、お嬢様って呼ぶなよ」
「はァ、これまで日本では身代金目的の誘拐事件で成功した例は一件もないんですよ!」
これまで、身代金を奪い取って逃げ切った誘拐犯人は皆無だ。
ハイリスクな割りに、実入りはない。
「ふぅん、そうなの」
だがアンジェラは気の無い返事だ。
「誘拐事件はリスクが高いし、危険なんですよ」
「そう?」
「ええェ、防犯カメラの普及やドライブレコーダーなどで犯人も特定されやすいですし。さらに最近の子供たちはGPS機能つきのスマホを持って位置情報を共有しています。それに防犯意識が高いですから。だから誘拐事件そのものが減少しています」
「へえェ、でも大丈夫よ」
「はァ、なにが大丈夫なんですか?」
「ドサクサに紛れて身代金を強奪するから」
「なにがドサクサなんですか。戦後の闇市じゃないんですよ」
頭が痛くなってきた。
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