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出会い
夏と呼べる日はもうわずかで、朝夕は足先が冷たくなることが増えた。
日中だってレジに数時間立っていると芯から凍えてしまいそうなほどだ。
「まあ、ここは、一年中寒いよね」
「主任、お疲れさま」
精肉売り場の社員が代わり、新しくマサミチという男が来た。
『これでマサミチさんと読むんですか?』
『はい。真理と書いてマサミチ。しかも苗字だから、説明ややこしくて』
『確かに、字だけ見ると迷っちゃいますね』
『なので、下の名前で呼んでください。司です。マサミチツカサです』
『よろしくお願いいたします』
初日からとても軽い印象だった。
年齢はあまり変わらず、三十代だと聞いた。
少しいい加減そうな軽い口調と、年配のパートさんへの抜かりない声かけ、若いバイトの子たちとも隔たりなく交流する。
コミュニケーションおばけ、と一部の人間に揶揄されるほどマサミチは圧倒的だった。
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