終わる世界と宝物

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   それからぼくはミクと生活をともにすることになった。  この世にはもうぼくらしか生きていないかもしれないのだ。  初対面だろうと、身を寄せ合わない理由はない。    ミクは、ぼくらが出会った場所から歩いて十五分くらいのところにある地区センターで暮らしていた。    初めてそこに案内された時、ミクは言った。 「ここなら広いし、色んなものを持ち込めるからね」    見れば、センター内にある体育館には様々なものが乱雑に置かれていた。  文庫本、掃除機、ハンガーラック、ラジカセ、テレビ、パソコン、マグカップ、ひいては理科室に置いてあるような人体模型にいたるまで、その種類は実に幅広い。一つも合わさっていないパズルを見ている気分だ。    新たなピースとして、入口付近の壁にミクがギターケースを立てかける。 「……えっと、これは何?」  ゴミ屋敷然としている光景を前にして、伺うようにぼくは訊いた。 「コレクションだよ、私の」 「コレクション?」 「うん。ここまで集めるのに一年くらいはかかったかな。この近くの学校とか民家に忍び込んでコツコツ集めたんだ」 ……なにゆえ?  「ガラクタ集めるのが好きなの?」  言ってから、すごく失礼なことを言ったことに気づく。  案の定、ミクは頬を膨らませた。 「ガラクタじゃないよ! お・た・か・ら!」 「……そうですか」  変なやつに絡まれたな、という考えが頭をよぎった。  先程までは久々の人との遭遇に内心歓喜していたのに、人間は随分と我儘に出来ているものである。
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